ねこ館長日記

一茶と善光寺②「落書き」

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知た名のらく書見へて秋の暮 文政句帖 文政五年

 文政5年8月29日、60歳の一茶が善光寺を訪れ、ふと本堂の柱を見ると、そこには2日前の日付で長崎の友人の名前がありました。一茶が長崎を訪れたのは30年も前の事で、わずかの差で、なつかしい友人との千載一遇の再会を逸してしまったのです。そんな無念の気持ちを一茶は俳句によみました。(文政句帖によります。文政版『一茶発句集』では、1日前の出来事とし、俳句の前五が「近づきの」になっています。)

 善光寺ではかつて、訪れた人々が記念に柱や壁に落書きをしていました。現在は大半が消されてしまいましたが、山門の二階に上ると、幕末頃の落書きが今でも壁いっぱいに残されています。(写真は善光寺山門)