ねこ館長日記

月別アーカイブ: 2015年6月

矢羽勝幸先生の一茶記念館講座「四季の一茶」

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6月27日、第2回の一茶記念館講座を開催しました。

講師は前回に引き続き、矢羽勝幸先生をお招きして、「四季の一茶」という題でご講演いただきました。

 先生は2013、2014年に、同タイトルで、信濃毎日新聞で2年間にわたり、1日1句、一茶の俳句をご紹介する連載をされていて、連載をまとめた『四季の一茶』『続四季の一茶』という本も刊行されています。

 今回は一茶の俳句を17個のテーマに沿ってご紹介いただきました。うちいくつかをご紹介いたします。

不便(不憫)さよ豆に馴たる鴨鴎(カモメ)

あるがまま、自然なままを尊しとした一茶は、人間に餌付けされた野鳥を見て、自然の姿の方がいいと言っています。

掃溜(はきだめ)に青むねりその柳哉

「ねりそ」は、柳のようなしなやかな木をそのまま縄として使用したものをいいます。縄として使われ、捨てられた柳の木が、ごみ溜めで再び葉を付けている。逆境に負けずしぶとく生きる姿を一茶は賛美しています。

霜がれや鍋の炭かく小傾城(けいせい)

「傾城」は遊女のことです。軽井沢の追分で詠んだ句で、追分では「飯盛女」が有名でした。小が付いているので、まだ一人前になる前の、下働きをしている女の子が、追分を流れている小川で鍋を洗っている様子です。一茶はそれを橋の上からみて、愛情を込めてこの句を詠みました。弱者に向ける優しいまなざしも一茶の特徴です。

日ぐらしや急に明(あかる)き湖(うみ)の方(かた)

いわゆる一茶調だけでなく、蕉風の正統的な秀句も一茶は残しています。この句は野尻湖を詠んだ句で、ヒグラシの声とともに、急に日が射して明るくなった水面を写生しており、どこへ出しても恥ずかしくない素晴らしい句です。

ここでは紹介しきれませんが、個々の俳句を解説しながら、世に知られている有名な俳句では理解しきれない一茶の作風の特徴を判りやすく解説していただきました。

スウェーデン語の一茶書籍をご寄贈いただきました

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 6月13日に、信州大学名誉教授の関谷俊行様から、一茶について書かれたスウェーデン語の本をご寄贈いただきました。

 本のタイトルは『Tre samtal om främlingens liv i Japan(日本で過ごした外国人の3つの対話)』で、作者はPer Erik Wahlundというスウェーデン人作家の方です。Wahlund氏は1977年に日本を訪れ、一茶旧宅やお墓を見学しました。その際、関谷さんが案内を務めたのがご縁で、翌年著作が送られてきたそうです。内容は2人の人物による対話形式で、日本文化や一茶のふるさと訪問の様子を紹介しています。所々にスウェーデン語に翻訳された一茶の俳句も記されています。

 また、関谷さんのご先祖は一茶の友人だった小布施の関谷杜風(もりかぜ)とのことで、杜風や関谷家に関する資料もいただきました。一茶を巡る縁で、新しいご縁が生まれ、たいへんありがたく思っております。

かわいい切り絵のうちわが出来ました

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一茶記念館では、企画展「切り絵で描く一茶の恋猫」がはじまりました。初日の今日は作家の横倉絹枝さんによる切り絵教室を開催しました。集まったほとんどの方が初心者の皆さんです。今回は猫の絵柄の団扇作りに挑戦しました。

 はじめに黒い紙から輪郭を切り抜きます。通常のカッターナイフより刃先が尖鋭なデザインナイフを使いますが、細かい作業に皆さん悪戦苦闘です。

 次に、目や首輪などに色を入れるため、輪郭の裏にトレーシングペーパーを当て、切り抜く形のあたりを付けます。それをうちわに当てて爪でこすり、うちわにも目印を付けておきます。ずれないように写すのがなかなか難しい。

 その後色紙を切り抜いてうちわの目印に貼り付けます。貼り付けには木工用ボンドを薄めたものを使用します。はみ出すくらいに塗って、貼った後にぬれタオルでふき取ります。

 最後に輪郭を重ね、ドライヤーで乾かして完成です。皆さん横倉さんから、作り方のコツを含め丁寧な指導を受け、作品作りに没頭していました。

 今回は横倉さんが切抜き用の型紙から、マット、ナイフまですべて用意していただきましたが、家でも作りたいと、道具までその場で購入される方が多数でした。参加者の皆さんで横倉さん(前列黄色い服)を囲み、自分で作った作品を持って記念写真。皆さん出来栄えに大満足の様子でした。

今後、切り絵教室は7月11日、8月8日の2回開催予定です。

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